「やまなし」の読解を進めています。今回は、研究授業をぶつけた9時間目です。題名が「やまなし」なのはなぜか?を考えました。授業の流れ、成果と課題を記録します。
本時の流れ
導入
本時の主発問「題名が『やまなし』なのはなぜか?」を提示する前に、導入を行いました。
導入では、”物語の題名”というものに興味をもたせつつ、今までの学習の振り返りをしながら、主発問を投入したいと考えていたのです。
「好きな本の題名は?」「今までの学習では対比を使ったね」「絵を見返してみて」
等と簡単な応答形式の言葉を投げかけながら主発問につなげました。
課題の確認
主発問「題名が『やまなし』なのはなぜか?」を早速投入しました。
画面に主発問の文言を写し、ホワイトボードに板書しました。
児童にはそれをノートに写させました。
「できそうな人?」2人手を上げました。
「難しいと思う人?」ほとんどの児童が手を上げました。
雲行きが怪しくなった瞬間です。
ここで書き方の例示を出しました。(ここは反省点1)
例1:賢治が○○を伝えたかったから。
例2:「やまなし」には○○という意味が込められているから。
上の○○を考える授業です。
自力解決
まずは全文をマッハ読みで音読してから、自力解決に臨みます。
自力解決では、自分の解をノートに書かせました。
「一言でスパンと言い切りましょう」と指示を出しました。
ノートに書けた児童は、私(教師)に見せます。
私から、ジャムボードの何ページ目に書くかの指示を受けます。
ジャムボードへの入力が済んでから、ノートに根拠を詳しく書き足します。
ただ、この自力解決が想像以上に難しかったようで、なかなかノートを見せに来ませんでした。
その後の交流時間を確保するために、駆けていない児童にプレッシャーを与えようと、起立させました。(これは反省点2)
2種類の共有
ほとんどの児童が自分の解をもったところで、共有の時間に入りました。
まずは、ジャムボードのページ分類の解説を行います。
1ページ目は「生や喜び、安心」等のプラスの表現、3ページ目は「死や恐怖、不安」等のマイナスの表現、間の2ページ目はマイナス・プラスどちらも踏まえた表現です。
それぞれのページを確認した後1種類目の共有に入ります。
1種類目の共有は「少人数グループ」。
自分が話したい相手を選んで話にいかせます。
意見を言いやすい相手の所に行く児童もいれば、意見の違う相手をわざと選んで討論を開始する児童もいます。「主体的に学習に取り組む態度」の評価にも使えます。見通しをもって、自分に必要な行動をとれるかどうか、大事です。
2種類目の共有は「全体発表」。
教室全体で一人ずつ意見を発表していきます。
指名なしで、決心がついた児童からどんどん発表していきます。
その間、私はホワイトボードにキーワードのマインドマップを書いたり、児童の意見に一言ずつコメントを入れたりしながら、交通整理をしていきました。
補助発問
発表ひと段落着いたところで、補助発問を入れました。
「やまなしは、今どんな状況か?」
かにたちにとって喜びをもたらすやまなしですが、やまなしの状況はどうなのか?を考えさせたかったのです。
私の解釈としては、やまなしは川に落ちた時点で死んでいます。
やまなしが死んだことで、かにたちに喜びがもたらされたのです。
そこが賢治の生き方にも繋がっていくのではないかと考えた上での補助発問でした。
児童はさらに頭を悩ませあんがら、意見を再構築していきました。
まとめ
私の方から解を言うことはしませんでした。
最終的な自分の意見を書いた人から授業終了にしました。
ノートに書く前に、ジャムボードに付箋を付け足すよう指示しておきました。
新しい付箋は色を変え、考えの変容が見えるようにしました。
課題と反省点
山ほどある課題ですが、今回は2つに絞って記録します。
本時までの学習過程
主題(作者の伝えたいこと)に迫るためのステップが本時でした。
題名が「やまなし」である理由は、ほとんど賢治が作品に込めた想いとほとんど同質のものだと思います。
世界観を表してから、対比を扱う。
対比をもとに、やまなしの意味を考える。
それが本時までの流れでしたが、一つ大事なステップを飛ばしてしまったようです。
大事なステップとは「象徴」を扱うこと。
象徴とは、鳩=平和、7=ラッキー、等のようなもの。
「やまなし」では、恐怖の象徴である「かわせみ」に、喜びの象徴である「やまなし」が対比されていると言えます。
「やまなし」が象徴するものは何か?がはっきりしていないと、本時の課題に取り組むのは難しかったように思いました。
ノートには、対比の羅列しか書いてありませんでしたから…。
本時の課題に取り組む際のヒントとして前時のノートは機能しなかったようです。
自力解決時の支援
自力解決に時間がかかったのは、課題の難易度が高かったためです。
難易度の高い課題に取り組む際には、「例示」が必要になります。
解の一例を示してしまうのです。
授業後の講評でいただいた改善案は、課題直後の私の質問「できそうな人?」に挙手した2名にその時点で答えさせてしまう、というものでした。
今思えば、その通りでした。
が、そのときはまだいけるのでは?と思っていたんですよね…。
児童の実態、児童のレディネスを把握しきれていませんでした。
また、ジャムボードでのキーワード共有は、例示として機能するのではないか?と考えていたのですが、それも難しかったようです。
自力解決のできていない児童にとっては、キーワードだけ提示されてもさっぱり意味が分からないのです。
「困っていた児童はキーワードではなく根拠の方が欲しかったのでは?」との講評をいただきました。
全くその通り…!
成果
同じ分科会の先生から、授業後は成果を探すことも大事ですよ。と教えていただいたので、成果についても2点ほど書いておきます。
児童の姿
児童は、おそろしい難題だったにも関わらず最後まで粘り強く取り組みました。
一生懸命考え続けていました。
共有時も、男女分け隔てなく話し合えていました。
全体での共有時でも、整然と、立派な解釈を発表することができていました。
体育館という落ち着かない環境、多くの先生方からのナイフのような鋭い視線、マイクを使った発表…。
普通なら体験しない、異空間での授業。
本当によく頑張ったと思います。
そんな彼らの姿を見ることができただけでも成果と言えるのではないでしょうか?
教材研究
今回、やまなしの授業をするにあたって、過去最大級にコストをかけて準備してきました。
コストというのは、時間的にも金銭的にもです。
本屋で見つかった「やまなし」関連の書籍は全て購入し、目を通しました。
作者、宮沢賢治をもっと知るために、岩手の宮沢賢治記念館にも行ってきました。
正直、授業前は「人事を尽くした」と思っていました。
多くの分析、先行研究、国語の読解技法、やまなしの解釈…。たくさんの学びがありました。
間違いなく、今後の国語の学習に生かせると思っています。
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