「やまなし」読解を進めています。今回は、解釈が含まれる授業です。2つの場面「五月」と「十二月」に副題をつけました。世界観を対比させるためです。授業記録を記していきます。
1組での失敗
事前授業としてやらせてもらった1組では、あまりうまくいきませんでした。
うまくいかなったポイントを記していきます。
副題の場所の失敗
1組では、作品の題名である「やまなし」に副題をつけました。
「やまなし ~○○と△△の物語~」というように、○○には「五月」のイメージを、△△には「十二月」のイメージを当てはめてもらおうと考えていました。
しかし、「やまなし」の副題を付け始めると、「蟹の兄弟と父の物語」「かにとクラムボンの物語」等のように、「かに」を副題に入れる人が続出したのです。
確かに、作品通して登場するかにを副題に入れたい気持ちは分かります。
しかしこれでは肝心の対比を押さえられません。
このように、題名「やまなし」に直接副題をつけるのは難しいようでした。
例示の失敗
副題の説明をするために、インターネットで見つけた副題のついている作品を紹介しました。
その中に「スイミー」がありました。
「スイミー」は2年生で扱っているから大丈夫だろうと思ったのですが、アメリカから来た子がいたのを忘れていました。そこで説明し直す必要があったので、時間的にロスがありました。
また、思ったよりも「スイミー」を覚えていない人が多く、いまいち話がかみ合いませんでした。
みんなが国語好きで、読んだ話を覚えているわけではないのです…。
さらに、「スイミー」の副題は「かしこい ちいさな さかなの おはなし」というものだったのも今考えればいまいちでした。
この例示によって、主人公っぽい存在である「かに」を副題に入れる人が続出したのではないかと思っています。
例示って難しい!
対比への理解度見誤りの失敗
1組は、普段私ではない別の先生が授業をしています。
当然、授業内で話す内容にも違いや差が生まれます。
私は国語に限らず、授業では「対比」という言葉を連発したり、児童に説明させたりしているので、すっかり対比は知っているものと思ってしまっていました。
しかし、1組ではそこまで重視して「対比」を指導しているわけではないので、「対比」と言われておポカンとする児童が何人も見受けられました。
学習指導要領やその解説にも明記されているわけではないので、仕方のないことです。
しかし今回のゴールを考えると、「対比」を知っているかどうかはかなり大きな違いです。
なんとか「対比」について簡単に説明したはいいものの、なかなか理解が追いつかなかった児童もいたようです。
結果、「かにとクラムボン」「かにの兄弟と父」のような副題が続出したのでしょう。無念…!
2組での改善
副題をつける場所を変更
2組では、副題を付ける場所を変更しました。
「五月」の副題、「十二月」の副題、というように、副題の場所を分けたのです。
これによって、児童は「五月」と「十二月」をそれぞれでよく読み、それらに見合う言葉を選んだり、作ったりすることができたのではないかと思います。
発問時に指示
2組では、発問時に指示として「対比を使うように」と指示をしました。
ほとんどのその意図を児童が理解し、「五月」と「十二月」で対比させた副題をつけることができました。
これで、「やまなし」は「十二月」にしか登場しないことを確認できましたし、「やまなし」に対比されるのは「かわせみ」か「クラムボン」か、という主題を考える際の手掛かりになるものも手に入れることができました。
「対比」は、物語だけでなく説明文を読む際にも使える読みの視点です。
社会や理科でも使えると考えています。
ぜひ「対比」の視点は押さえておくことをお勧めします!
児童がつくった副題
児童がつくった副題を紹介します。
それぞれのアルファベットが同じものは、同じ人がつくったものです。
対比の視点を生かして副題を作っています。
「五月」の副題
A かわせみとかにのお話
B 黒くとがった鉄砲玉
C クラムボンと三匹
D 小さなかしこいかにのお話
E 謎のクラムボンとの出会い
F 青光りの鉄砲玉と魚のゆくえ
G 朝の恐怖
児童がつくった「十二月」の副題
A やまなしとかにのお話
B 黄金の丸いやまなし
C やまなしと三匹
D すっかり大きくなった3人ぐらしのかにのお話
E 謎のクラムボンとの別れ
F 黒く丸く大きなやまなし
G 夜の楽しみ
次回への展望
今回は、二つの場面を対比させて副題をつけることができていれば及第点でした。
欲を言えば、抽象語を使ってほしかったところです。
例えば、上でいうところの「朝の恐怖」と「夜の楽しみ」といったものです。
「恐怖」は、文中には直接書かれていない文言ですが、「五月」の場面を「恐怖」という言葉でまとめるのは正しい読み取りであると言えます。
このように、次の時間では、抽象語でそれぞれの場面を捉えることができるようにしていきたいと思いました。
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