【国語】「やまなし」の謎を追って/色と象徴で分析する

「やまなし」の学習を進めてきました。主題に迫る授業を目指しています。分析的に読むための見方として「色」と「象徴」がポイントになります。今回は、「やまなし」の授業と「色」と「象徴」をどう組み合わせていったのか、解説します。

宮沢賢治さんが書いた短編、「やまなし」。

文中にはたくさんの「色」が出てきます。

「二枚の青い幻灯です」「日光の黄金」「そいつの目は赤かったかい」「魚の黒いかげ」etc…。

まずは、五月と十二月に分けて、どのような色が登場したかを探し、ノートにまとめました。

ちなみに、既習事項として〈五月と十二月を絵にする〉という活動をしています。

ここで時間をとって、「何が何色として表現されているのか」や「どの位置に何色があるのか」を確認できるとなおよかったのかもしれません。

象徴① 一般的な「象徴」

いきなり「やまなし」の象徴を探るのではなく、少し練習しました。

例として、「ハト」と黒板に書きます。

「連想される言葉は?」と聞きました。

(ちなみにこの聞き方は少し失敗だったかも…。「糞」や「首」などの意見が出て、脱線しかけました…。)

出してほしかった答えは「平和」です。

「ハトは平和の象徴」とよく言いますよね。

次は「7」で考えます。

こちらは「ラッキーセブン」「幸運」とすぐに出ました。

例として、この二つを板書し、ノートに書かせました。

反省点①

「象徴」の説明文に「連想ゲーム的なもの」と書きましたが、やっているうちに少し違うかもしれない…と思いました。

連想できれば何でもOKなわけではないと思います。

例えば「ハトは糞の象徴か?」と聞かれても納得できませんよね。

一般性も必要です。

国語辞典には「シンボル」と書いてありました。

象徴の説明、難しいです…!

反省点②

「象徴」のインパクトを生むために、初めは○○と板書していました。

これも、「ハト」と聞いて「糞」と連想してしまった原因の一つだと思います。

初めから「象徴」と板書し、「ハト=平和」までは、私が書くのを見せるだけでも良かったかもしれません。

その後、「では『7』は?」「『黒』は?」と少しずつ問いかけてみるのもアリだったと感じています。

興味の引き方や効率の良い教え方等、工夫の余地は多く残されています。

象徴②「やまなし」の「色」と「象徴」

次に、「やまなし」に登場する色で象徴性を探っていきました。

全て満遍なく扱うのは、象徴初心者のクラスには難しいかと思い、優先度をつけておきました。

「黒と黄金の象徴は必ず考えるように」

5分程時間をとり、ノートに書かせました。

その後、指名なしでどんどん発表させ、私が黒板に箇条書きしていきました。

「黒」が象徴するものとしては「恐怖」「あわただしさ」「不安」「闇」等が挙げられました。

「黄金」が象徴するものとしては「喜び」「安心」「希望」「夢」「威厳」等が挙げられました。

これらは全て読解として正解だと思います。

むしろよく読めているのではないでしょうか?

ただし、今回私は3学期の「海の命」を見据えて、理解度を上げ、求める答えのレベルを高めておきたかったので、私の解釈を伝えました。

私(教師ナス田)の解釈

①黒

黒が象徴するものは、ざっくり言うと「死」だと考えます。

作中に登場する黒いものは「かわせみのくちばし」「魚の黒いかげ」「かにの親子の黒い影法師」「やまなし」の4つです。

まず、「かわせみのくちばし」です。

これは天から突然振ってきて、魚に死をもたらしたものです。

死の使い、いわば死神。「死をもたらすもの」ともいえるかもしれません。

上記のことを踏まえると、「魚の黒いかげ」は、その後魚が死ぬということを暗示したものなのではないでしょうか?

「やまなし」ですが、これは「やまなし」そのものの「死」です。

「やまなし」は、川に落ちた時点で「死んでいる」というのが私の解釈です。

以上を踏まえても、黒が「死」を象徴しているというのは妥当性があるのではないでしょうか?

※逆に「生」の象徴であるとの考えもあるそうですが…。そちらの方が、読みとしては深いかも…。

※「かにの親子の黒い影法師」までは解釈できていません。どなたか、説明できませんか?

②黄金

続いて黄金の解釈です。

私は「極楽浄土」、または「死の中にある安心」を象徴しているのはないかと思っています。

黄金と表現されているのは「日光の黄金」と「やまなしの黄金のぶち」の二つです。

これらはどちらも、水面より上から振ってきたものです。

先ほど、黒の解釈で、「かわせみは死をもたらすもの」と書きました。

逆に、物語のメインとして描かれているのは水中です。

水上は、天井の上、つまり空の上です。

「そこには何がある?」と子どもたちに聞きました。

子どもたちは「天国」と答えました。私も「どうだと思う」と反応しました。

天国から振ってきた色が黄金なのです。

作者論的な話になりますが、宮沢賢治は仏教徒です。

仏教で黄金と言えば、極楽浄土、つまり天国を表します。

宮沢賢治の故郷のある岩手県にも、中尊寺”金色”堂がありますよね。

天国、天上は、黄金の世界なのです。

以上を踏まえて、私の解釈としては「黄金が象徴するものは極楽浄土、つまり市の中にある安心だ」となります。

次の授業へ…

今回は、私も相応の教材分析をしています。

研究授業後の講師の先生からお話も聞いて、理解度も高まっています。

「やまなし」=「黒&黄金」=「死&死の中にある安心」という解釈です。

そして、この物語は「やまなし」です。

宮沢賢治さんの想いが詰まっているはずです。

賢治が伝えたかったものは? 次回の授業で、決着をつけたいと思っています。

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